この世界で君を愛す
係員がドアを閉めると ゴンドラの中はシーンと静まり返った。



ゆっくり…ゆっくり…。



僕達を乗せたゴンドラは空へと近付いていく。



真ん中の高さまで来た所で 僕は未知の向かい側から隣に移動した。

「かっかたむく!」

未知は焦って僕の腕にしがみついた。

「大丈夫だよ。これくらいで傾かないから」

「でも怖い!」


怖がる未知が可愛くて 僕はからかいたくなった。


「ねぇ 未知?もしも今地震が来たら…強風が吹いたら…どうする?」


「そっそんな事言わないでよー」


「ぷっ…。冗談だよ。下を見るから怖いんだよ。遠くを見てごらん。もったいないよ こんなにキレイなのに」


未知は恐る恐る顔を上げて窓の外を見た。


「夕日が…」


遠くに見える水平線を 夕日がオレンジ色に染めていた。


「キレイ…」


未知は僕の腕にしがみついたまま夕日を見つめていた。


< 61 / 310 >

この作品をシェア

pagetop