この世界で君を愛す
「未知?初めてデートした時にも観覧車に乗ったの覚えてる?」


「うん。もちろん」


「あの時も 僕が未知の隣に座ろうとしたら 未知がすごい勢いで怖がるから…結局座れなかったんだよね」


「だって怖かったんだもん。向かい側の席だっていいでしょう?お互いの顔が見えるし」


「あの時は向かい側じゃダメだったんだ」


「なんで?」


未知は不思議そうな顔をした。


未知って たまに鈍い時あるんだよな。


僕は溜め息をついた。


「なんで?」


性懲りもなく聞いてくる未知に 僕は言った。

「キスしたかったから!隣にいなきゃできないでしょ!」


「ああ」と納得したかのような顔をした後 未知は「ええっ!?」と変な声を出した。


「でっでも…他のゴンドラから見えちゃうんじゃない?家族連れだって…子供だっているのに」


お前は中学生か!いや 教育委員会か!と…心の中で未知にツッコミを入れながら 僕は未知につかまれている腕と反対の手を彼女の右の頬に当てた。


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