この世界で君を愛す
未知はもう怖いとは言わなかった。

相変わらず僕の腕にしがみついたまま 遠くの夕日を見つめていた。

未知がどんな顔をしているのか僕には見えないが…きっと僕と同じ気持ちでいるだろう。



今が永遠ならいいのに。



未知もそう思っている。



ゆっくりと地上へ降りていく観覧車。



このままずっとてっぺんにいれたらいいのにね。



そしたら…未知は僕の腕にくっついたまま…ずっと二人でいられるのに。



未知は高い所が怖いのに そんな事を考える僕は自分勝手かな。




僕は大きく深呼吸して その考えを打ち消した。


「ほら 未知。もうすぐ降りるよ」


「えっあぁ うん」


ぼうっとしていた未知が弾かれたように返事をして間もなく…ゴンドラの扉は開かれ 僕達は再び賑やかな世界へと戻っていった。






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