この世界で君を愛す
もっとも 渉がコーヒーショップの店員の間で怪しい存在だった時 私と渉はまだ赤の他人だったのだが。

怪しいとは思いつつも そこは大事なお客様だったので 毎朝営業スマイルで対応していた。

そんな私達が親しくなったのは偶然図書館で出会ったのがきっかけだった。


私は先生に頼まれた資料を探すため図書館に足を運んでいたが そこにいつも通りボサボサ頭の渉が現れた。


どんな本を読むんだろう?


ちょっと興味が湧いた私はこっそり渉の後をついて行った。

渉は腕組みをして真剣な顔で何かを探しているようだった。

毎朝見ているボーっとした男性とはまるで別人の表情に 私はちょっとドキッとした。

私は渉に気付かれないように目の前の分厚い本を手に取って読んでいるふりをして顔を隠した。

しかし…。

数秒後 渉が私に話しかけてきたのだ。


「あのぅ…その本なんですけど ちょっと必要で…。良かったら次に貸していただきたいのですが」


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