この世界で君を愛す
とっさの出来事に私は固まった。


どうしよう…。


いつもの渉と同じ位怪しい私に 渉はもう一度声をかけてきた。


「あの…?すみません」


「はっはい!?」


裏返った声を出しながら顔から本を離すと渉は3秒後に私に気付いた。

「あ。コーヒーショップの…」


まずい!と思ったが 渉は私が興味本位で後をつけたとは思いもしない様子で呑気に言った。


「偶然ですね。君もそういう本読むの?」


「えっ?」


その分厚い本の表紙には『機械工学 第6巻』と書いてあった。


「えっ?まぁ…たまに。あはは…」


「そうなんですか。君が僕と同じ本を読んでたなんて ちょっと嬉しいです」


そう言うと 渉はニコッと笑った。


その意外にも爽やかな笑顔に 私はまたドキドキしてしまったのだった。




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