この世界で君を愛す
「どっどうぞ。私はいつでもいいので…」

私はその分厚い本を渉に差し出した。

「いいんですか?僕が先に借りちゃって。いや…でも本当に助かります」

渉は頭を掻きながら私に笑顔を見せた。

「いえ。それじゃ…」

私は渉に一礼するとその場を離れ 先生に頼まれた資料を探す事にした。


危ない 危ない。

大事な資料を忘れるところだった。


私は資料を探し出すとカウンターで本を3冊借りた。

図書館の自動ドアを出る時に振り向くと 渉の姿はもうなかった。


もう帰ったのかな。

…。

なんで私…彼を探しているんだろう。

なんでドキドキしてるんだろう。



その時私は 恋は突然やってくるものだという事を知ったのだった。




< 72 / 310 >

この作品をシェア

pagetop