この世界で君を愛す
「それでは発表します!」


未知はグラスをテーブルに置くと 大袈裟に胸を大きく反らした。


ついに重大発表か!?と思いきや 拍手をする用意をしていた僕の期待はまた裏切られた。


未知が僕の胸にそっと寄り添ってきたからだった。


「…未知?」


「わ…たる…。どうしよう。私…嬉しくて」


未知は小さく震えていた。


「今度ね。子供向けの物語の翻訳をさせてもらうことになったの。丸ごと一冊だよ?」


「本当!?やったじゃない!未知…良かったね!」


「でも…ちょっと不安。私にちゃんとできるかなって」


僕のシャツをつまみ 胸に頬を摺り寄せて甘える未知がたまらなく可愛かった。


僕は未知の頭に自分の頬をくっつけながら言った。


「大丈夫。未知なら大丈夫だよ」


「そうかな…」


「僕は未知が努力してきたのを知っている。未知はきっといい翻訳家になれるよ。だから大丈夫」


「…うん。ありがとう 渉」


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