この世界で君を愛す
その後 僕達は未知の仕事についてや 拓也君の小学校の話をして楽しく過ごした。

特に未知は 一生懸命に話す拓也君の姿がかわいくて仕方ないようだった。

正木は…今日は珍しく酒を飲まず ひたすらすき焼きを食べていた。


気付けば壁の時計は21時を指し 拓也君は未知の膝に頭を乗せて 小さな寝息をたてていた。


「あら。いけない。もうこんな時間!拓也ったら寝ちゃって…ごめんなさいね」


「いいえ 全然。ふふっ…拓也君はしゃいで疲れちゃったんですね」


未知が拓也君の髪をそっと撫でて言った。


「うちは母子家庭ですから。いつも二人っきりで。今日はみなさんと楽しく過ごせて拓也は本当に嬉しかったんだと思います」


拓也君の寝顔を見つめる阿部さんに未知が言った。


「阿部さんの御主人は病気で…?」


「ええ。胃癌でした。この子がお腹にいるとわかってすぐ…主人の病気が発覚したんです。でも本当に前向きな人で…私のほうが励まされたくらいなんですよ」


「…」


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