この世界で君を愛す
「あの人は…亡くなる時に言いました。拓也が生まれてきて抱くことができたし 家族で過ごすことができて幸せだったって。この先…私と拓也が幸せでいてくれれば自分も幸せだって」


「阿部さん…」


「だから私…亡くなった主人のためにも拓也と二人で幸せになろうと思ってるんですよ。それに…主人の病気がわかってから亡くなるまでの間に してあげたい事をしてあげられたし 話したい事も話すことができた…主人も私達のために少しでも長く生きようと病気と闘ってくれた。だから悔いはないんです」


未知はその目に涙をいっぱい溜めて聞いていた。


「阿部さんは…御主人の事…忘れることができるんですか…?」


「いいえ」


阿部さんはゆっくりと頭を振った。


「忘れるなんてできるはずがありません。でも…あの人は私達のそばで見守っていてくれる。だから泣いているより笑っていたほうがあの人も喜ぶかなって…そう思います」


いつの間にか 未知は僕の顔をじっと見つめていた。


そんな未知に僕は小さく頷いた。



そうだよ…未知。 



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