この世界で君を愛す
「あっ いけない!すっかり長居してしまって…。拓也?そろそろ帰るわよ。起きて?」


阿部さんが拓也君の体を揺すると「ううーん」とうなってなかなか起きない。


「もう…拓也?」


もう一度拓也君を起こそうとする阿部さんに僕が言った。


「今日は電車で来たんですよね?帰りは僕が車で送りますよ」


「いえ…そんな…大丈夫ですから」


恐縮する阿部さんに 今度は未知が言った。


「いいじゃないですか。今日は来てくださって嬉しかったんですから。送るくらいさせてください」


「でも…」


その時 僕の隣に座っていた正木が急に立ち上がったと思うと 眠っている拓也君をそっと抱き上げた。


「俺が送って行きますよ。こんなに良く眠っているのに起こすのは可哀相だ。さぁ 行きますよ」


「はっ…はい!」


有無を言わせぬ正木の行動に 阿部さんは反抗できなかったようだ。


正木は自分の車のシートを倒すと拓也君を寝かせ その隣に阿部さんを乗せるとドアを閉めた。



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