天上のワルツが聴こえる
と。

少女の左腕が、ピクンと痙攣した。

いっしゅん、白亜の聖堂のイメージが少女の脳裏でフラッシュする。

えも言われぬ恐怖感が、少女を襲った。

無表情な白い闇に、全身を捕らえられるような、つかみどころのない恐怖である。

全てが、白だ。

真っ白な無が、まとわりついてくる。

まるで、金縛りだ。

「いやっ!」

あらん限りの声で、少女は叫んだ。

全身をとり巻いていた奇妙な呪縛は瞬時にして氷解し、だしぬけに覚醒した。
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