天上のワルツが聴こえる
それは、彼女の過去だった。

このコロニーへ移送される前の、遠い日の記憶だった。

少女は気づいた。

今日の眠りで、老婆は安定を得られなかったのだ。

もともと、不安定な心の老人だった。

いつも、リーザとリーファを混同していた。

それほど深く、彼女の心は病んでいたのだ。

だから、中途半端な眠りでは足りないのだ、きっと。

少女は切なくなった。

人々は、ワルツのリズムに興じているというのに、こんな所でうつろに過去を見つめている者がいる。

もはや、全てのヒトを導くことができないのだろうか。

ふっと、そんな考えが浮かんだ。

つとめて考えないようにしてきた答えが、そこにあった。
< 22 / 151 >

この作品をシェア

pagetop