天上のワルツが聴こえる
限界──。

自分は、限界なのだろうか。

夢見としての能力が、衰えてしまったのだろうか。

このように不安定な状態の者が、他にも沢山いるのだろうか。

少女は、くっと拳を握りしめた。

「おばあさん、あたしを視て」

少女は、息をつめて精神を集中した。

この哀れな老婆を救わなければ、と思った。

老婆の、あたたかい笑顔を取り戻そうと思った。

少女は、病んだヒトを目の当たりにして、はじめて、心から救おうと思ったのだ。

少女の赤い髪が、ふわふわと宙に舞い上がった。

遠くのほうから、陽気に浮かれ、舞う人々の音楽が聴こえた。

それは、謡うようなワルツのリズムだ。
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