天上のワルツが聴こえる
けれども、フロルは苦手だ。

純真無垢な顔をして、お茶に虫の抜け殻をすりつぶした粉を混ぜたりする。

魔除のリースに蛇の皮を編み込んで、悪夢を呼び覚ましたのも、彼だ。

いつも微笑んでいるけれど、その微笑みには魔物が棲んでいるに違いない。

少女は、きつい眼でフロルを見た。

「ピーチが、待ってるから」

不健康なほどに色白な少年は、空を映したような瞳を細めてくすっと笑った。

「君はいつも、ピーチ、ピーチだね」

「関係ないでしょ!」

ぷいっとそっぽを向く。

きびすを返して駆け出そうとした。
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