天上のワルツが聴こえる
少女は、黙って彼の眼を見上げた。

それは、穏やかな、優しいとさえ思える瞳の色だった。

あれほど気に入らなかったはずのフロルが、不思議と近い存在に思えた。

強烈に、魅かれる何かを感じた。

少年が、少女の頭を撫でようと手を伸ばした。

が、やめた。

そのかわり、少女の肩をしっかり抱き寄せた。

夢見の髪に無造作に触れてはならない。

彼は、その鉄則を守った。

赤い髪は、人々の夢を紡ぐ触手、いわばアンテナなのだ。
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