天上のワルツが聴こえる
「…帰れるのね…」

知らず、そうつぶやいた。

そこかしこから流れるワルツのリズムが躰中を駆け巡り、神経が麻痺してしまったようだ。

何故だか、心地よい陶酔感があった。

フロルは、少女の躰を抱きかかえるようにして歩いていった。

夜の帳とワルツのリズムが街をおしつつむ。

その日は、生誕祭のイヴだった。
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