天上のワルツが聴こえる
フロルは、ため息をつく。

「なぜ? ぼくを信じるんじゃ、なかったの?」

「でも、こわいわ」

「君を救ってあげるって、言っただろう?」

「救うって、どうやって?」

「言葉では、説明しにくいよ」

「どうして? ピーチは、いつだってちゃんと説明してくれたわ!」

フロルは、首をすくめた。

「また、アンドロイドか…」

そう吐き捨てるように言ったフロルの顔を見て、少女は背筋が冷たくなった。

感情を映さない、人形のような表情だったからだ。

アンドロイドのピーチでさえ、そんな冷たい顔はしない。

彼は、いつも暖かく、慈しむような瞳で自分を視た。

冷たいはずの銀の双眸が、とても優しかった。
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