天上のワルツが聴こえる
「あのねぇ、おばあさん。あたし、このごろ、変なんだ…」

「おやまあ。一体、どうしたんだい?」

「うん。あの白い聖堂がね、呼んでるような気がするの」

「おやまあ…」

老婆は、しわくちゃの顔で微笑んだ。

「リーザは、疲れているんだねぇ」

そう言って、屋台の棚から白い花をつけた小さな鉢を取った。

「ほぅら、いい香りだろう? とても気持ちがやすまるよ」

少女に鉢を手渡す。

ふわりと、林檎のような甘酸っぱい香りがした。

「ほんとだ。いい香り」

胸いっぱいに吸い込んで、ほう、と息をつく。

少女は、ニコッと笑って老婆を見上げた。
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