天上のワルツが聴こえる
「気に入ったかい? じゃあ、持っておいき」

老婆も、優しく笑い返す。

「ほんとぉ?」

少女は、小踊りして喜んだ。

「おやまあ。もう、こんな時間だよ…」

老婆は、急にあたふたと店じまいをはじめた。

少女は、え? と思って、幻視時計にシンクロしてみる。

16時52分。

「あ、たいへん! 安らぎの時間だわ」

安らぎの時間に外をウロウロしていてはいけない。

そういえば、いつのまにか人通りもまばらになっている。

「おばあさん、ありがとう。またね!」

少女は、老婆に手を振って石の階段を駆け降りた。
< 9 / 151 >

この作品をシェア

pagetop