短編集。
雨とオカルトパーク





一度でも彼の手を握っておけば、
彼は何処にも行かなかったかもしれない。




【雨とオカルトパーク】





雨の降る日、傘を差して町をフラフラ歩いたら、僕の知らなかった公園に辿り着いた。
公園で遊ぶような年じゃぁないけど、気になったので中に入ったら先客が一人。
僕と同い年位の男の子がいたのです。

「……こんにちは」

彼は休憩所のようなレンガ屋根のあるベンチに座っていて、
ウッカリ目が合ってしまい取敢えず挨拶をしてみる。

「こんにちは……誰?」

なかなか直球な返事が返ってきて、僕はなんだか彼に興味を持った。
彼はどこかの学校の制服を着ている。僕の知らない学校。
僕はその姿に見覚えがあった。会った事は無いはずであるが。
それにしても今日は日曜日だ。どうして制服でいるのか、
何故雨の日に一人でこんな所にいるのか、
彼に尋ねたくてしょうがなくなった。

「……座らない?良かったら話をしようよ」

と彼は言った。僕はその一言がやたら嬉しくて、
喜んで、と言わんばかりに彼に笑って見せた。
そうしたら彼も嬉しそうに笑い返して、互いに自己紹介をした。

「いつも此処にいるの?」と、聞いてみる。

「うん。でも此処は余り人が来ないよ。君はどうして此処に来たの?」

「散歩中、偶然見つけたんだ」

「この雨の日に?面白いことするなぁ。」彼は不思議そうに首を傾げた。

「そうか?雨って好きだよ。町は静かになるし、人ごみは苦手だから。…君こそ、この雨の中でも此処に来てるじゃないか」

「ああ、それもそうだ」

と僕たちは笑いあった。

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