短編集。
なんだか、ずっと昔からの知り合いのように気の許せるやつだ。
今日やっと出会えたことが惜しい、もっと早くに会いたかったね。
と、彼に言ってみたら何故だか泣きそうに笑った。
僕にはこの意味がよく分からなかったし、
彼もすぐに違う話題をふって来たから、後にはスッカリ忘れてしまっていた。
何時間も話をして、雨が止んだことに気付いた。
「・・・そろそろ帰らないと、雨も止んだし、人が町に出てくる」
「頑なに人ごみを避けるんだな」
「・・・そうだね。人ごみって、息が詰まりそうになるんだ」
こういう事を誰かに言ったのは初めてだった。
彼には何でも話す事が出来て、彼も色々話してくれた。
本当はまだ話していたい。
「・・・また、来てもいい?もっと話したいよ」
「うん。いつでもいるよ。此処は人が来ないから、寂しいんだ」
「他の所に行かないの?」
「・・・行けないよ。僕は此処がいいんだ」
「そうなのか?・・・じゃあ、また来るから。君が寂しくないように」
そう言って手を振り、彼に別れを告げた。