短編集。
凍る太陽 焼けた月


毎日のように僕らは戦っている。


何と?






 








窮屈な制服を纏い窮屈な規則のもと日々の日課を消化する、良く考えれば監獄の中にいる様な毎日。

一体何を好き好んで此所にやって来たんだっけ。


「詐欺だよな。世間体と現実がこんな違うなんて。」

「俺達も見る目なかったね。」

世間的に此所は、品行方正・格式高い完全寮生の進学男子校。
けど現実じゃあ授業をして違反を許さないだけの監獄紛いの場所だった。

そんな中この二人は懸命に教師達と抗争を続けている、教師から見れば危険因子の存在である。



真直ぐな一沙と現実派の灯夜。その出会いは入学前。


寮は二人部屋で何の因果か同室になったものの、その頃は特に話もなく、大して仲も良くなかった。
しかし初授業、一沙の隣りの席の奴が教科書を忘れた事から二人は関わり始めたのだ。
置き勉なんて許されるものじゃなかったのでこういう事態も起こり得る。
気配りの良い一沙は当然の様に彼と机を寄せて間に教科書を置いた。
灯夜はそれを少し後ろの方から見ていたが、彼の安堵した表情と言ったらなかった。
だが、それも束の間。教師は二人を叱った。
非常に理不尽で横暴な叱責である。

「早々に物を忘れるような奴に授業を受ける資格はない。」

教師は彼に退室を命じた。
彼もおとなしく出て行こうとしたが、一沙はそれを引き止めたのだ。
たかが教科書じゃないか。と。
教師は怒った。まぁ当然だと灯夜も思ったが、それ以上に一沙に面白い奴だと興味を持ってしまった。

結局一沙は散々教師と口論した結果、隣の席の彼共々教室を出された。
一沙はその後も教室に戻って来なかったが、寮に戻ったら既に部屋にいて不機嫌そうにしていた。

「…今日格好悪かったね」

灯夜は興味本位で話しかけて見ると、一沙は顔色を変えた。
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