短編集。
今まで話掛けるのは一沙からで、灯夜から話を振ってきた事はなかったのだ。

「…俺は間違って無い筈だ」

「だよね」

灯夜は鞄を机に置きながら答えた。
それは一沙にとって意外な答えだったらしく、一沙は目を丸くした。

「お前は、何か…思ってたのと、性格違うな」

「俺はここの教師と違って普通なんだよ。1日生活して分かったけど、教師達おかしいよ」


「…やっぱりか」

間を置いて一沙は言った。

「見てみろよ。ホレ」

一沙は袖を捲って腕を灯夜に突き出した。
その腕には無数の紫色の痣が広がり、所々擦傷もあった。凄く痛々しい。

「何それ」

「教室追い出された後にやられてな。『生徒の為を思って』とか言ってたけど、ただの体罰だな」

「凄い問題なんじゃないのソレ…」

灯夜は重きと捉えていない一沙を見て飽きれたように言った。
今の時代に体罰なんていったら大した問題だろう。

「誰かに言ったら退学だって言われた。今までもそうやって来たんだろこの学校は」

「良く世間から問題視されなかったもんだ。まぁ、何言っても無駄だったんだろうね」

灯夜は立ち上がって机の引きだしを探り始めた。
一沙がどういう事かと聞くと、灯夜は引き出しから見つけ出したバンドエイドを4~5枚一沙に渡してまた座った。

「此所は寮制だし電話もあまり使えないし。それに変に抵抗すれば受験に響く」

あ~なるほど。と一沙は感心した。
きっとこの学校は、生徒は教師の配下に成り下がっているんだろう。
命令を聞けば生き残れる。聞けなければ制裁。
一体何処の監獄のつもりだ。
校則の書かれた生徒手帳を見てみれば、必要性の判らない校則がズラリと憲法の如く400条。

「その内生徒もおかしくなるな。これが日常になっていく」

自分達もこの学校の毒に侵されていくんだろうか。進路の為に将来の為に。

「俺はおかしくなんかならない」

灯夜は言った。

「当然。自分の意志は持ってないといつか駄目になる」

一沙は約束しよう。と灯夜に言った。
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