短編集。
なんて、答える訳ないか。
はあ。
『なら、飛んでみろよ』
誰の声でもない。
自分の中で自分が自分にそう言った。
ああそうか。もしかしたら神様がいるかもしれないじゃないか。
屋上のフェンスを越えて向こう側に出てみた。
足場は狭い。柵もない。
うわあ。この町結構広いんだな。
風が吹いてる。冷てえな。
神様頼む。俺をアンタの所に行かせてくれ。
こんな所にいたら、俺はもう呼吸が出来ない。
俺は足を一歩踏み出した。
そしてもう一歩。
体がふわりと平衡を失った。
どんどん、どんどん落ちてく。
――そうだ、俺は飛ぶ術なんか持っていなかったんだ!
なあ神様。
俺の話聞いてたか?
俺、別に死にたかったわけじゃねえよ!!
目を開いてみると、俺は地面に落ちていて、
ボンヤリと空が見えた。
凄く、遠くなっていた。