短編集。

それを見た彼女は全て理解したらしく、途中で喋る事をやめた。



「お前も?…だよね。」



聞くまでもなかった。彼女の立ち位置も柵を隔てて向こう側。こっち側にはご丁寧に『遺書』と書かれた紙が、ローファーを錘にして置かれ、横には鍵がある。

きっと屋上の合鍵だろう。



「…降りるなら早く降りれば?私は気にしないでいいよ。」



「そうさせて貰うよ。」



僕は柵を越えて彼女の横に降りた。そこしか越えやすい柵がないのだ。

近付いて見てやっと気付いた。彼女は酷く震えている。

下を見て汗を噴いたり目を伏せたり、明らかに恐怖している様だ。


「…ホントに死ぬ気あるの?ガタガタじゃん。中途半端な意志なら止めた方が身の為じゃないの。」



「う、うるさいな。あるよ!もう散々なんだから!」



彼女は慌てる様に大きく身振り手振りをして喚く。

なんだか彼女、思っていた性格より生意気に感じた。



「そっちこそどんな大した理由があるっての?私なんかに説教してないで降りればいいじゃない!」





「…そうする。」



「え」





僕は自分自身を放り出す様に、地面に引き寄せられる様にコンクリートの外側へ。



「ちょ…っやだぁ!!」



彼女は思わず僕の腕を掴んで、コンクリートの上に引き戻した。



「俺は迷いなんてないんだよ。なんで邪魔するんだ。…人の死も見れない奴が死のうなんて思うんじゃねぇ。」



僕の言い方がキツかったのか、彼女はしばし俯いた後座り込んで泣き出した。

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