短編集。



僕の両親が先月亡くなった。事故で家にトラックが突っ込み両親と運転手は即死、僕も右半身に潰された様な痣と疵が一生残る事となった。

実際顔にも赤黒い痕がみえている。

先週ようやく退院し、学校の奴らはその痕を見ると、たちまち掌を返した様に僕を腫れ物扱いをし始めた。

一応いた僕の彼女はこの一ヶ月の間に浮気していたらしく昨日修羅場に遭遇した。



「…そんな女こっちから願い下げだって、思いっ切りフってやったけどね。」



僕は全て無くしたのだ。生きている意味が分からなくなるくらい、息苦しい程に手の中が空っぽになった。

自分を待つ人、止める人、必要とする人なんていなくなり、治りもしない疵の治療費で居候先の親戚宅に迷惑をかけるばかり。

こんなの、何より僕が耐えられない。



「…ウチら両方とも昨日彼氏彼女消えたんだ。」



彼女は笑った。こっちとしては、いや彼女としても笑い事ではないと思うが。



「これでお互いの浮気相手がお互いの彼氏彼女だったらどうする?」



彼女は冗談ぽく言う。



「わあーソレちょーウケるぅー…。」



実は、あながち冗談でもなかったりする。

以前見た事のある、コイツの彼氏と、昨日見た浮気相手、何だか似ていたような気もするのだ。



「…そっか、私ら、ちょっと似てるんだ。それならもっと早く知りたかったなあ。」



いつの間にか空が暗くなっている。夕暮れが終わりかけているのだ。

その為彼女の表情はよく見えないが、声が震えているのは良く分かった。

本当に弱い奴だ。生意気かと思えば小心者で、急に泣き出したり。こっちの気まで抜ける。



「…死ぬの止めれば?死んで彼氏見返したって、そん時には喜ぶ事だって出来ない。死ぬ意味ないよ。」



「な…あんたは?」



「降りるよ。決めたんだ。もう生きてたって怖がられたり金掛かったり、迷惑かけるしかないんだから。」



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