短編集。
再び、3度目の正直と言うべきか僕は飛び降りる準備をする。 風が冷たく僕を掠めて吹き抜けた。

僕と関わった全てにさようなら。もう消えるから、皆安心して生きて下さい。



「まって!!」



彼女が突然立ち上がって叫んだ。



「止めてくれてありがとう。一つお願いしてもいいですか…」

「何。」







「私の事好きになってよ。」







「なんだろう。あんたは死んじゃいけないと思うの。此処で逃げないで欲しい。疵なんて、私は気にしないよ。」



…本当に、生意気だったり小心者だったり…

別に彼女が好きな訳じゃない。ただ生きる意味と、自分を必要とする人ができた。

それだけで、まだ生きていけると思える。



「私はあなたが、好きです。」



やっぱりダメだと思ったら、その時は二人で死のう。



彼女とお揃いな合鍵と遺書は 暫く引き出しに しまっておこう。













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