短編集。
神ぞこの身はなり次第
【神ぞこの身はなり次第】
僕は眼を凝らし過ぎて涙を眼に溜めた。
そして瞬きと共に一滴の雫となって流れ落ちる。
何故こんなに眼が乾く程に見開いていたかと言えば、眼の前のこれだ。
僕の死体があるんです。なんでだろ。
死んでる自分の他にあるのは、血と、野次馬と、ガードレールに突っ込んでる車と、
道路にはタイヤのスリップ跡。
流れ的に事故死というやつでしょうか。
…あ、違う。もしかしたら死んでいないのかも。
なんか僕から飛び出てる臓器みたいのが動いてるや。
じゃあ此処にいる僕はなんだ。
救急車が到着して、生存が確認された僕を乗せる。
救急隊員が一瞬吐きそうな表情をしているのが見えた。
あーあの人きっと当分焼き肉とか食べらんないんだろうなー。
ハンバーグもダメだな、あれ、ひき肉だもんね。
道端で車に轢かれた犬猫が死んでたり、まさにあんな感じだよ。
人間てこんなに脆いんだ。
いつだったか「人間は高等生物だ」って誰かが言ってたんだけど、このザマはなに?
散々偉そうにしたって悪知恵働かせたって、死んでしまえばこんなにも呆気ない。
弱い癖に世界を我が物顔で動かして、他の動物を見下して、
最悪な生き物だな。