短編集。
白に消え行く




一年で一番寒い季節。
一日で一番寒い時間。

学校から帰ってきた私を、迎えたのは、

「…こんちわ。」

誰?



【白に消え行く】



専門学校一年生。
憧れた東京。
そして憧れた人がいる。
私の同居人の爽。一つ年上の他校に通う超絶美人。
何をやっても誰も勝てない人で、強くしなやかに振る舞う、最高の同居人。

「爽ちゃんの彼氏さん!?」

家の前で待機していたのは、そう。そんな最高の同居人の相方だったのだ。

「はじめて知った…。」

「はは…だろうね…。付き合いは誰にも内緒にしてたんだ。」

かっこいいけど何処か弱さのありそうな男の子。
彼に対する第一印象はそれだった。
ひとまず彼を家に入れた私は、部屋を暖めてお茶を用意する。

「どうしたんですか、何かご用…。」

「うん。ごめんね見ず知らずなのに押し掛けて…。ただ、こう…あいつに逢いたくなって。」

ああ、分かってしまった。
そうか、この人。

「ごめんなさい…いなくて…。」

「いいんだよ!分かってたし…。そんな顔しないで、ね。」

彼は慌てて私を宥める。
どうも泣きそうな顔になっていたらしい。

「…爽ちゃん…学校でどんな感じなんですか?」

彼は私の質問に、少し動きを止めた。
そして彼もまた『ああ、そうか』と言うように目線を落とす。

「…分かるかもだけど、誰も勝ち目の無いやつだよ。」

「ああ、やっぱり。」

「この間の実習の時もね、アイツ一人だけ信じらんねえ様な服作ってさ。も、先生泣きそうだったよ。」

「あはは。」

「とんでもないデザイナーになるだろなって、皆して言って…。」

彼は少し悲しげな目になる。

「…アイツの部屋、見てもいいかな…。」

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