短編集。
ヒカリノチカラデボクハクルウ
僕は思うんだ。
僕をいたぶる存在があって、僕は我慢強くなんかないから、何処かで吐き出さなきゃならない。
だから僕は
今日も夜な夜な骸づくり。
――ヒカリノチカラデボクハクルウ―――
今日の新聞にも昨日のにも一週間前のにも、同じ事件の記事が載っていた。
私の住んでいる町の辺りで動物の虐待が頻繁に起きているらしい。
野良犬や野良猫が狙われているらしく、道端に動物の切り裂かれた死骸が転がっているというのだ。
そして、運悪く私の犬は2週間前から何処かへいなくなっていた。
今日も私は犬を探す。
これは夜中の出来事だった。
坂の上の公園でクラスメイトにあった。
目立たないが成績優秀で、常に学年トップにいる男の子だ。
話した事は殆んどない。
「あ…っ。こんばんは…」
遠巻きに見掛けるくらいならしなかっただろうが、思いきり鉢合わせてしまったので気まずさ混じりで挨拶をした。
彼も返事をかえしたが、無愛想で話がもたない。
「…どー…どうしたの?こんな夜中にこんな場所で…」
「別に…」
それだけ言って立ち去ろうとする。
思わず引き留めたが、なんて言ったらいいのか分からなくなった。
「ねっねぇ!私、犬探してるの!ほらこういう雑種なんだけど…。見掛けたら教えてくれない!?」
私は慌てて携帯のデータフォルダから犬の写真を出して彼に見せた。
白いふわふわした毛の中型犬。
それを見た彼は、静かに眉間に皺を寄せて、苦虫を噛み潰したような顔、そんな感じになった。
―だって僕には、僕にだって、―
沈黙が流れる。
私は彼に向けて突き出した携帯をなんとなく引っ込められなくて、目線だけ逸らした。
「………………手伝う」
不意打ちだった。
まさかそんな答えが返ってくるとは思わなかったし、皆に『もう諦めろ』と言われていた。
私が拍子抜けにお礼を言ったら彼は歩き出して、本当に犬を探し始めたのだ。
嬉しかった。でもそのとき、彼から、何か覚えのある臭いがした。
私はそれが何か思い出せず首を傾げた。