短編集。
歪曲御伽のヲンナノコ
《あるところにとてもかわいらしいヲンナノコがいました。》
天気は快晴 風も良好、本日は実に最悪コンディション。
《なんだか暇だったので、ヲンナノコは出掛けてみる事にしました。》
街を歩けば爽やかな空気、楽しそうな笑い声に元気な人達。
ああ、今日という日におあつらえ向きな人たちね。しあわせそうで、滑稽だわ。
今日が晴れてなかったら、私の方がしあわせなのにね。残念だわ。仕方ないけど、帰りましょ。
《ヲンナノコはお家につくと、押し入れから白い布を出しました。》
明日はいいお天気になりますように。
てるてる坊主でお願いしましょう。
明日は、いいお天気に。
《その部屋の天井には、大きなてるてる坊主がところ狭しと吊るされています。》
《全て逆さま、頭を下にして。》
《翌日、窓を開けたヲンナノコは喜びました。》
ああ素敵!淀んだ厚い雲に寒々しい風、雨も降っている!
最高だわ。今日は、とってもうきうきするの。早く出掛けましょ!
《ヲンナノコは押し入れから宝物を取り出して、大事に持ってお家を出ました。》
誰がいいかしら。場違いな人。この素敵な日に似つかわしくない人。何処かにいないかしら。
あの人。よし、決めたわ。
《ヲンナノコがその人近づいていくと、その人は顔を歪めて驚きました。》
こんにちは。ねえ、素敵な日だと思わない?こういうお天気大好きなの。だから、いつもこういうお天気でいて欲しいから、いつも逆さまのてるてる坊主を作るの。ねえ、あなたも、ご一緒しませんか?
《ヲンナノコは宝物の釘バットでその人の頭を割って、るんるんしながらお家に持って帰りました。》
《昨日整えておいた白い布を被せて首で結わえて、天井にぶらさげたら完成です。》
《こういう訳で、ヲンナノコはお友達がたくさんです。》
素敵なお天気も、お友達も大好きよ。
明日も、いいお天気になりますように。