短編集。
理性の欠落した遊戯
今の自分の状態といえば全くもって可笑しなものだ(笑えないけどさ)。
無理矢理床に押さえ付けられて腕は血が止まりそうな程強く掴まれている。
あまつさえ首にも奴の手が掛かって、いつ呼吸を阻まれても不思議じゃないってくらいに完璧な姿勢だ。
(なんだろうこれ。)
(何がどうなった状況?)
自分にずしりと体重をかけて乗っかっている奴は、自分を見下して黙っている。
だから自分も暫くの間、黙って奴を睨んでいた。
ふと首を掴む奴の冷たい指が、つつ、と首筋を這った。
首に、虫がいるみたい。
(きもちわるい。)
自分の肌が羽をむしられた鳥みたいになっていくのが手に取るように分かる。
それを見てる奴は、満足げな様子で腹立たしい笑みをした。
「…今、すごく暇なんだ」
やっと喋ったと思ったらそんな台詞。
奴の手が急に力を帯びて、息をする為の喉の空洞が狭まる。
うぐぅ、なんて呻き声を出したら、奴はもう一度笑って更に一言。
「ねえ、ゲームでもしようか。
どっちが長く正気でいられるか、競争だよ。」
そんな台詞が出てくる時点で、既に勝敗は決まってるんだけど。
苦しいっていうか、やっぱり奴がきもちわるくて、返事せずに目を逸らした。
理性の欠落した遊戯