似非家族
「うわぁああぁあああ!!!!!!」


静かに殺気を込めると、真島は悲鳴に近い声をあげる。

そして、勢い良く俺の手を振り払い、一目散に走り去っていった。




「初めからそうしていれば良かったじゃない。」




お嬢ちゃんの声に振り返ると、またあの苦手な目で見つめられる。


「やっぱり“優しい”のね?」

「……うっせ。」


お見通しだと言わんばかりの笑みに、俺はそっぽを向いて答えた。


「……にしても、ヘタレのくせにやるじゃねぇか?」

「へ、ヘタレじゃないって……!!」


言いながら髪をグシャグシャにしてやると、手を払いながら反抗するクソガキ。

そういや、コイツもだったけど……


「……おい。」


突っ立ったまま動かない女に声をかける。

女は何も言わなかったが、顔を上げてコチラを見た。

俺は、何だか気恥ずかしくて視線を反らす。

そして……


「地味でとろくて田舎くさくてババ臭いのは変わんねーけど……お前、肝座ってんだな。」

「……。」

「女に助けられた挙げ句、なんかメチャメチャ恥ずかしいこと言われた気がするが……」




「正直嬉しかった……ありがとうな?」
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