似非家族
「別に名字知ってりゃ良いだろ……。」

「ダメよ。」


抵抗すると、お嬢ちゃんに即答された。


「家族を名字で呼ぶの?」

「まぁ、普通はしねぇだろうけど……俺らは普通じゃねぇだろ。」

「普通じゃないから尚更、普通になるために普通のことをするの。」


お嬢ちゃんの目が、真っ直ぐにこちらを見据える。

理屈はわかってるんだ。

いや、だが、しかし……


「言いなさい。でないと……」




「“パパ”って呼ぶから。」




「ぱっ……!?」


なんてむずがゆい響きなんだ……!!

何故そんな究極の選択を……!?


「さぁ、言うの?言わないの?」

「わ、わかった!言う!!言えば良いんだろ!?」


あー、くそっ、完全にお嬢ちゃんの術中にハマっちまってるじゃねぇか……。

だが、パパなんて呼ばれて端から白い目で見られるのは避けたい……。

そう思い、俺は意を決して口を開いた。


「お、俺の……」
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