似非家族
「失礼しました。」


俺が考えていると、彼女は遊具から出ようとくるりと方向転換する。


「ちょ!ちょっと待った!!」

「……何か?」


ハッとして呼び止めると、またくるりと方向転換する彼女。

漆黒の髪が揺れて、とても綺麗だ。

この感じ……絶対どっかで会ってるはずなんだけど……。


風にたなびく漆黒の髪……

見詰められて、逸らせない瞳……


俺は、ある1つの記憶に辿りついた。



中学校の入学式の日、俺は1番に教室に入ってやるって意気込んでた。

走って走って、勢い良くドアを開ける。

すると、そこには先客がいた。


春の風にたなびく漆黒の髪……

ジッと見詰めてくる瞳……


そうだ、彼女は……



「もしかしてアンタ……」
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