似非家族
「おはよう、和四。」




朝日よりも眩しい彼女の笑顔がそこにあって……。

俺は眩しくて細めたはずの目を思いっきり見開いた。


「お、おはよう……っ!」


え、ちょ、何!?夢じゃなかったの!?!?

状況が呑み込めずに1人混乱する。

そんな俺を見て彼女は言った。


「顔、洗えば?」

「お、おぅ。」


そうだ、落ち着け和四!

とりあえず顔を洗って目を覚まそう、うん。

もしかしたらまだ夢かもしれないし……。

そう考えて、俺は水飲み場で顔を洗った。

寝起きの夏の朝に、冷たい水は気持ちが良い。

バッチリ目が覚めて、さぁ顔を上げよう……と思ったが、なかなか上げられない。




もし顔を上げて、彼女がいなかったら……




そう考えると怖かった。

水がポタポタと伝い落ちるのがわかる。

あー、どうしよ……。




「タオル持ってないの?」




「へ……!?」


声に驚いて横を見ると、タオルを差し出す彼女の姿がそこにあった。


「どうぞ。」

「ど、どうも……。」


差し出されたタオルを受け取ると、ゴシゴシと滴る水を拭う。
そして、恐る恐る顔を上げた。


「拭くものぐらい持ってないと。」

「ご、ゴメン……。」

「別に謝らなくても良いのに。」


そう言ってクスリと笑う。


俺、顔洗ったよね?

タオル握ったよね?

喋ったよね?




……夢じゃないっ!!
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