似非家族
「知るか。俺は帰る。」


呆れて立ち上がりながら。

そして背を向けたときだった。




「何処へ帰るの?」




その言葉が、妙に突き刺さる。


「……関係ねぇだろ。」

「帰る家があるの?」




「関係ねぇっつってんだろ!?!?」




まるで“あの時”のように、デカい声で振り払う。


「……帰る。」

「あ、待ってください!」


ドアノブに手をかけたのと同時に、女に止められる。


「あ、あの、本当に大丈夫ですか……?」

「あぁ、手当てしてくれたんだろ?飯も美味かったし……」




「ありがとな。」




「ぁ……。」

「じゃあな。」


ドアを開けて、そのままに。

ポロアパートだから勝手に閉まるだろ。




だから、振り返らなくたって良い。
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