烏乃唄-カラスノウタ-
今からちょうど五十年前の昭和三十二年。


和江が当時一六歳の時の話し。


和江は七人兄弟の五番目の子だった。


しかし年の離れた兄、三人は皆戦死していたため四番目の子である姉、瑞江(みずえ)をひどく慕っていた。


当時和江は学生で姉の瑞江は近くの花火工場に勤めていた。


普段は日中の仕事が多かったが、花火という夜特有の物を作っている関係で夜仕事に行く事もあった。


そして和江が忘れもしないあの日、瑞江は夜の工場へと仕事に向う。







「いい?母さん今日具合が悪いからあまり煩く(うるさく)しないでよ?」


「分かってるって!いつまでも子供じゃないんだから。」



心配性の瑞江は夜家に残す弟、妹それから母が気になって仕方がなかった。



「姉さん早く行かないと遅刻だよ?」


「ああ、そうね。じゃあ戸締まりしっかりしといてね!」
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