烏乃唄-カラスノウタ-
「あーくそっ!もっと早くに電話しておけば…!」
「仕方ないわよ。会社のほうでなかなかうまい具合に休みが取れなかったんだから」
早紀が旅行のパンフレットをめくっているとある旅館のページで手を止めた。
「ねぇ!ここ凄く安いよ」
「えー安いとこは明らかに無理じゃねぇか?」
「でも一応電話してみてよ」
早紀の押しにしぶしぶ宏隆は電話した。
トゥルルルル―
ガチャ
「あっもしもし?笠峰旅館ですか?」
《……………》
「あのー…」
反応がない。
もしかして番号まちがえたか?と宏隆が心配するとワンテンポ以上遅れて返事が返ってきた。
《…はい…そうです…》