烏乃唄-カラスノウタ-
キィッ
パタン
郵便受けから手紙を取り出した。
まあ、いつもダイレクトメールか両親からの手紙がほとんどだが。
しかし今日は違った。
今日は白い封筒が一通。
差出人は駒形尚人(こまがたなおと)。
ただし住所はない。
「駒形?知らないなぁ…」
受取人である瀬川薫(せがわかおる)は首を傾げてマンションの自分の部屋に向かった。
「ただいまぁ」
「あーお帰り」
薫は兄の楓(かえで)と一緒にこのマンションで暮らしている。
両親は薫が中学生の頃に仕事でそれぞれ外国に行っている。
なのでそれ以来兄と二人暮らしだった。
「ご飯すぐ出来るから早く着替えてこい」
「はぁい」
大学生の楓と高校生の薫は日々分担をし家事をこなしていた。
そのうちの炊事は帰りが早い楓が主に担当している。