烏乃唄-カラスノウタ-


「だれかいるの?」



問いかけても返事がない。


恐る恐るリビングを覗いてみるが誰もいない。


不安を抱えながら自分の部屋に戻るとふと部屋にある鏡に目が止まった。


そして薫は顔面蒼白し悲鳴を上げた。



「キャアアアア!!!!!」



ガチャ



「薫?!どうした!!」



ちょうど家に帰ってきた楓は薫の悲鳴に驚き部屋にとんできた。



「薫!!」


「おっお兄っちゃ…」



薫は震える指で鏡を指差した。


それに導かれその先を見た。



「っ!」



楓も思わず息を飲んだ。


鏡には二十歳前後と見られる男性が頭から血を流しながらこちらを見ている姿が映っていた。


そして鏡には

“お前を愛している”

と流れ落ちる血文字で書かれていた。
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