烏乃唄-ｶﾗｽﾉｳﾀ-

町田慎一郎(まちだしんいちろう)は先ほどからカルテをペラペラとめくる医師、豊島英介(とよしまえいすけ)の顔を凝視していた。


豊島がカルテを一通り見終えると慎一郎のほうを向きゆっくりと口を開く。


それと同時に慎一郎はゴクリと生唾を呑み込んだ。



「町田さん、やはり数値が下がってます。このままではかなり危険な状況になるので肝移植するしかないですよ。」


「はぁ、そうですか…」



慎一郎は数週間前に突然体調が悪くなり病院にやって来た。


診断の結果“肝不全”で即入院。


最初は薬の投与だけだったが検査をするたびに数値は低下し遂に危ないラインまでもきってしまった。


幸い東京の大きな病院に入院していたため、あとはドナーを待つだけなのだ。