救ける人逃げる人
第1章 発見
山の中の雪道を1台の車が走っている。
乗っているのは、男性2人。

「おい、あそこに倒れているの、人じゃないか?」
「それがどうした?」
「外は零下の寒さだ。あのまま放って置いたらあの人死んじゃうだろ?」
「だから、それがどうしたっていうんだ?」
「助けなくていいのかよ!」
「お前、こんなときに冗談言ってんじゃないよ。」
「冗談じゃない。俺は本気だ。あの人を助けよう。この寒さで放置したら、まちがいなく死ぬって。」

山の中の雪道を自動車で走行中、路端に倒れている人を発見したら、あなたはどうしますか?
もちろん救助するという人、面倒な事に関わり合いたくないから助けないという人、単に面倒臭いから助けないという人、人間として自分を犠牲にしてでも助けるべきだという人、いろいろな意見があるだろう。
この男2人も、意見が分かれた。
1人は助けようと主張し、1人は助けないと主張する。
2人なので、多数決で決めることができない。
しかも、この2人の男が置かれている状況は、単に倒れている人を救助すべきかどうかという状況以上に、多少複雑な部分があった。

車の中にはジュラルミンのアタッシュ・ケースが積まれており、その中には数千万円という現金が入っていた。
彼らはこの現金を輸送している最中だった。
しかも合法にではなく違法に。
彼らは銀行強盗だったのである。
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