救ける人逃げる人
「お前なあ~、俺たちはたった今、そこの町の銀行から現金を強奪してきたんだぞ。
銀行強盗が逃走中に人を助けてどうするんだよ!
そんなことしてたら、俺たちがつかまっちまうよ。」

「でも、人の命と俺たちが逃げ切ることとどっちが大切だ?人の命じゃないのか?」

「お前なあ~、ホント、勘弁してくれよ!
なんでどこの誰とも知らない奴の命の方が俺たちの犯罪成功よりも大事なんだよ!
それに、放っておいたってそいつは死なないよ。」

「なぜ?外は零下の寒さなんだぞ」

「なぜなら、俺が今救急車を呼んでやるからだ。
電話だけして、すぐに俺たちはこの場から立ち去る、いいな?
119番通報して、この場所を特定しておけば、あとは救急隊員が見つけてくれるさ。だから、あの人は死なない。」

「救急車か。
電話だけで救急車がここに来るのを確認せずに立ち去るのは少し気が引けるが、まあ、いいだろう。
要はあの人が助かればいいわけだから。」

携帯電話で「119」とダイヤルする。

「あれ?つながらない。」

「ここ、車道はあるけど、山の中だから、電波状況が悪いんだよ。
やっぱ、救急車呼べないよ。それに電話が通じても、俺たちはこのあたりの地理に詳しくない。
この場所をどうやって、救急車の人に説明するんだ?
できっこないよ。
やっぱ、俺たちがこの車であの人を救助して病院まで運んであげるしかないよ。
でないと、あの人、死んじゃう。」

自分たちの犯罪の成功、すなわち「自分たちの裕福な暮らし」、という経済上の利益と、倒れている人の命、という人道上の倫理、この2つのものがここでは秤にかけられている。
あなたなら、どちらを優先しますか?


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