雫
巡る
それから風とともに、あらゆるものを見、感じ、想った。
すべてのものは、畏れである。
けれどすべてのものは、その煌めきをもつかぎり美しい。
「じき日がおちる。」
「短い間でしたが、ありがとうございました。」
「…地上に戻るのだな?」
「はい。明日の朝、僕はもう一度目覚めるでしょう。そしてきっと、それは新しい僕です。」
「お前は新しい命として芽吹く…けれどそれは、今のお前の死でもある。
逃れる法はある。
それでもいくか。」
風は僕にえもいわれぬ表情をする。
「僕は死にますが、命は死にません。
仲間にもまた逢える。
また旅ができる。
それで十分です。」
僕は風に笑う。
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