海,テトラポッド,そして花火。
「海へ,行かないか。」


静かに,でも私の目をしっかり見て言った。


――海。


「海って…あの?」


「そうさ。
いつも僕らが行っていた海だよ。


…約束を果たそう。」


――覚えていたんだ。
あの夏の約束を覚えてくれたことが,純粋に嬉しい。


泣きそうだ。

泣きそうで,でもあの人の前で涙は見せない。
見せちゃいけない。
これは私の意地。


私は下を向いて唇を噛んだ。
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