海,テトラポッド,そして花火。
「僕は,あの夏をもう一度やり直したくて帰って来たんだ。
返事はすぐじゃなくていいよ。

…明日は海じゃなくて,ゆっくりどこかで話そうか。」


いつの間にかあの人は私の隣まで来ていた。


私の頭を撫でて,柔らかく微笑んだ。


私は,どうしたらよいかわからない。

今まで心の奥に必死に閉じ込めて鍵を掛けていたものが一気に出てきそうだ。


何も話せなくて,あの人の顔も見れる訳もなくて,私はただただ下を向いた。


「困らせるつもりじゃなかったんだけどな。
とりあえず,明日,11時に迎えにくるよ。」


そして,私の髪にキスを落として,帰って行った。


――また私は断れなかった。

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