恋日記
だけどそんなに我がままは言ってられない。

面会時間のギリギリまで2人は一緒にいたが、「また、明日。」と言って智也は病室をあとにした。

病院の廊下は来た時よりもずっと長く感じ、とぼとぼ歩いていると、突然誰かにぶつかった。

「あっ、すいません!」

・・・女の子。

ピンク色のパジャマを着た女の子が点滴を持ち上げながら笑顔で「大丈夫!」と言った。

可愛い。

可愛すぎる。

同じ年ぐらいかなぁ?なんて考えながら彼女を見つめた。

肩ぐらいまでの髪

二重の大きな目

小さい唇

親しくなりたい。

せめて名前だけでも・・・・

「あの・・・あの・・・な・・・な」

「あっ!私の名前は舞!山口舞!あなたは?」

「あっ・・・俺?・・・沖田智也。」

舞は嬉しそうに智也を見つめた。

ドキドキドキ

何も言えないまま時間だけが刻々とすぎる。

「じゃ、私行くね!バイバイ♪」

沈黙が嫌だったのか舞は手を振りながら行ってしまった。

あまりに突然で

あまりに簡単な出会い。

この時、『運命』なんて言葉を信じてはいなかった。

『初恋』今の智也にピッタリな言葉だ。

病院の外に出ると空は薄暗く、街頭の明かりが道を照らしていた。







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