白い天井~恋愛依存症候群~
妹が使ったのだろうか。
百円均一で買った、安いカミソリ。安全性を高めるため、刃には1ミリ間隔くらいで縦に格子が入っている。

アタシは何気なくそれを手にとると、ビニール製らしき格子を一つ、ひっぱった。

ピ……ッ

すると、わずかに伸びたあと、音もなく刃で切れる。


何に使おうという考えも、ない。
ただなぜか、剥かれていく刃に安堵を覚えた。


脳裏に、ユウヤの傷だらけの手首が浮かびあがる。


痛いの、かな。


今なら、きっと大丈夫。

アタシも……ユウヤに近づける。


楽に、なれる……。


突如湧き上がった、誘惑にも似た思い。

ためらうことなく、アタシはぎゅっと刃を押し当てた。
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