白い天井~恋愛依存症候群~
「えっ」


反応したのは、ユウヤだった。
ハルコの背後から一瞬、ほっとしたような顔が覗いた。

アタシは、また、何も言えずに立ち尽くす。
蛇に睨まれたカエル、ではないけれど、なぜか、体が動かない。

それどころか、動いてはいけない気すら、していた。


「前にね、中絶したことがあるの。流れたことも、ね。」


いつもとは違う緩慢な口調。
まるで、よく似た別人と対峙しているようだ。


「癖がね、ついちゃったみたい。赤ちゃんね、お腹にいてくれないの。もしかしたら……一生、産めないかもしれない」


ハルコは、静かに話し続ける。


「子どもはね、三人、欲しかったの。暖かい家族……夢なんだ。
でも、ね」


次第に、空気が粘り始める。


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